リターゲティング広告とは?仕組みや活用法がわかる!iOSアップデートの影響も解説
「トラッキングを許可しますか?」というポップアップは、ネット広告におけるプライバシー規制の影響で表示されています。ユーザーは、Webサイト・アプリでの行動履歴をアプリ側に提供する/しないを選択しやすくなりました。
「トラッキング許可するのは怖い」と方もいらっしゃるはずです。しかし、「トラッキング」はターゲティング広告や効果測定を目的に収集されるもので、多くの場合は個人を特定されない形でデータを収集・分析しています。大手広告媒体ではプライバシー保護の動きが進んでいるため、正しく理解すれば過度に恐れる必要はありません。
また「トラッキング規制が強まるなら、ネット広告は使わない方がいいのでは?」と懸念する広告会社の方もいらっしゃいます。そのためWeb集客について今後どう対応すべきかもまとめました。
今回のコラムでは、
- トラッキングを許可する/許可しないを選ぶと何が起こるのか分かる
- トラッキング設定の確認・変更方法が分かる
- ネット広告への影響を理解できる
トラッキング許可についてはもちろん、ネット広告への影響が気になる方も是非お読みいただきたい内容です!
目次
1.トラッキングとは?
トラッキングの許可が話題になったのは、スマホアプリのダウンロード・アップデート時にiPhoneで下記のようなポップアップが出るようになったため。
1-1.トラッキングとは「行動履歴を収集・分析」すること
トラッキングとは、Webブラウザやスマホアプリ上の行動履歴を収集・分析することです。行動履歴データからユーザーの興味関心が分析され、ネット広告でのターゲティングが可能になります。
Webブラウザでは、Cookie(クッキー)と呼ばれる仕組みで行動履歴を収集します。CookieとはWebブラウザにユーザーの情報を保存するための仕組みです。例えば、一度ログインした後ページを遷移するときに、ログイン状態のまま遷移できるのはCookieのおかげです。Webブラウザがサイトから提供されるCookie情報を保存することで「Aさんはサイト●●に訪問した」という情報がブラウザ上に残ります。
Cookieを使った代表例が「リターゲティング広告」です。
スマホアプリ上では、端末ごとに付与される「広告識別子(広告ID)」により行動履歴が収集されます。広告識別子は、iOSではIDFA・AndroidではADIDと呼びます。
Cookieや広告識別子により行動履歴を収集されると、例えば「この人はソファの購入に興味がある」と広告媒体側で認識されます。結果として、Web上でソファを探しているユーザーに、ソファや家具の広告を配信することができるのです。
1-2.ポップアップの背景には「プライバシー規制」の強化
「アクティビティを追跡することを許可しますか?」というポップアップが出るようになった背景には、プライバシー規制の強化があります。
ネット広告側としては細かいターゲティング設定ができるというメリットがあります。しかしユーザー側からすると「自分の行動が監視されているみたいで少し嫌だな…」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
実際に、2019年にJIAAが日本全国5,000名を対象に行った調査では、8割以上の方がネット上での個人情報の活用に不安を感じています。
(JIAA「2019年インターネット広告に関するユーザー意識調査」P5を参考に作成)
この流れを受け、iOSでは「iOS14.5」以降から、アプリ上の個人情報収集についてユーザーに明確な同意を取ることが義務化されました。Androidでは、次期バージョンであるAndroid12から実装されると言われています。
「トラッキング」はターゲティング広告や効果測定を目的に収集されるもので、個人を特定しない形でデータを分析することが多いです。法制度面でも、令和2年度の個人情報保護法改正によりCookie等の識別子に関する取り扱いが厳格化されています。大手広告媒体ではプライバシー保護の動きが進んでいます。
過度に心配し過ぎる必要はありませんが、心配であればアプリごとのプライバシーポリシーを確認すると安心です。
2.トラッキングを許可すると・しないとどうなる?
ここからは、iPhoneでポップアップが出てきたときにトラッキングを許可する/許可しないとどうなるか?を解説します。
2-1.トラッキングを許可した場合
ポップアップで「トラッキングを許可」を選択すると、他社アプリやWebサイトでの行動履歴が収集・分析され、ターゲティング広告が配信されます。つまり、自分の興味関心に近い広告が配信されやすくなります。
2-2.トラッキングを許可しない場合
ポップアップで「トラッキングしないように要求」を選択すると、他社アプリやWebサイト上での行動履歴が収集されなくなります。プライバシー面では安心かもしれない一方で、興味のない広告が表示されやすくなります。
トラッキングを許可しない=広告が配信されない、ではないのでご注意ください。
2-3.iPhoneでトラッキング設定を確認・変更する方法
トラッキングの「許可」または「拒否」については、ポップアップ上で選択した後でも確認・変更は可能です。
iPhoneでは[設定]>[プライバシー]>[トラッキング]より確認できます。
アプリごとにトラッキング許可をオン/オフもできますし、全てのアプリに対して一括で操作も可能です。
3.Apple・Googleのプライバシー保護への対応
プライバシー保護に向けて、スマホOS大手のApple・Googleは対応を進めています。
3-1.Apple(iOS)の場合
Appleは、トラッキング規制の仕組みをWebブラウザとアプリの両方で実装しています。
Webブラウザについては、ITP(Intelligent Tracking Prevention)と呼ばれるトラッキング防止機能が日々アップデートされています。アプリにおいてはiOS14.5以降、トラッキングに対し許可/拒否を選択できるポップアップが必ず出るようになりました。
3-2.Google(Android)の場合
Googleも、プライバシー保護に向けて様々な仕組みを実装しようとしています。
ブラウザについては、「Chrome」におけるサードパーティCookieへのサポートが2023年後半に向けて段階的に廃止されます。
・ファーストパーティーCookie:訪れたWebサイトから提供されるCookie
・サードパーティーCookie:訪れたWebサイト以外(例:広告媒体)から提供されるCookie
アプリについては、サポートページによると「2021 年後半より、ユーザーがインタレスト ベース広告または広告のカスタマイズをオプトアウトすると、広告 ID が削除されて利用できなくなります。アクセスしようとすると、ID の代わりにゼロの文字列が返されます。」とあります。
つまり、GooglePlayアプリ内でのデータ収集を拒否できる仕組みです。これはAndroid12以降で、段階的に実装される予定です。
4.トラッキング規制のネット広告への影響
トラッキング規制の強化は、ネット広告に大きく影響します。特に、広告媒体側から提供される「サードパーティーCookie」は影響を受けます。
4-1.行動ターゲティングへの影響
Webサイト上の行動履歴からユーザーの属性や興味関心などをターゲティングする際、多くはサードパーティーCookieの仕組みを使っています。トラッキングが規制されるとデータ収集が困難になります。結果として、ターゲティングの精度低下・ターゲティング不可のカテゴリ増加が今後起こりえると考えられます。
また、アプリの行動履歴からターゲティングする「アプリエンゲージメントキャンペーン」も、トラッキング規制の影響を受けます。
4-2.リターゲティングへの影響
Webサイト訪問者をターゲティングする「リターゲティング」広告も、サードパーティーCookieを元にしています。トラッキング規制が強化されることで収集できるデータが減少し、結果としてリターゲティング広告の表示回数が少なくなることも考えられます。
▼リターゲティング広告についてはこちらもご覧ください!
リターゲティング広告とは?仕組みや活用法がわかる!
ウェブ広告での「リターゲティング」とは「自社サイトを訪れたユーザーを対象として広告を出すこと」を指します。この記事を読むとリタゲの仕組みやiOSアップデートの広告への影響が分かります!
4-3.コンバージョン測定
ネット広告の成果=コンバージョン計測も影響を受けます。Cookieや広告IDの制限でユーザーの識別ができなくなる結果、コンバージョン計測できるデータが制限されます。また「コンバージョン」をもとにした最適化がしづらくなるケースもあります。
5.トラッキング規制・今後の対応は?
「トラッキングが規制されるならネット広告はあまり使わない方がいいのではないか?」と感じる方もいらっしゃるでしょう。
しかし現在、サードパーティCookieに依存しない広告配信メニューが多くなっていますし、代替技術の開発も進んでいます。加えて、ネット広告以外のメディアを組み合わせた集客戦略を実行することで、より大きな効果を得ることも期待できるのです。
5-1.サードパーティーCookieに依存しないネット広告配信
Webサイトやアプリ上の行動履歴に依存しない形でのターゲティングを活用することが、今後のネット広告戦略で肝になるといえます。例えば、下記のようなターゲティングが有効です。
・自社保有リストの有効活用:自社で得た顧客リストを活用したターゲティング
・SNSのエンゲージメントに基づくターゲティング:自社アカウントにいいね・コメントしたユーザーや類似ユーザーをターゲティング
なお、Googleをはじめとした大手プラットフォームは、ターゲティング規制に対応する代替技術の開発などを進めています。今後の動向には引き続き注目です。
5-2.自社コンテンツの強化
ネット広告においてはサードパーティークッキーに代わる技術の開発も進んでいますが、それでも規制の影響は大きいといえます。
そこで大事なのは、ネット広告だけに依存せず、自社コンテンツを強化して自然と集客が集まる仕組みを整えること。ネット広告=ペイドメディアだけではなく、自社運営の「オウンドメディア」やSNSなどの「アーンドメディア」も組み合わせることが重要です。
ターゲットのニーズに合わせた有益なコンテンツを増やしていくことで、ユーザーに見つけてもらい自然と集客できる仕組みを作ることが重要です。
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5-3.インフルエンサーの活用
自社から情報を発信するだけでなく、影響力のある第三者=インフルエンサーの活用も効果的です。
SNSの普及により、企業自身が発信する情報よりも一般ユーザーのクチコミが重視される傾向があります。
(株式会社オールアバウト「買い物とインターネットに関する調査」 ,2017年を参考に作成)
インフルエンサーの投稿は、商品の感想をユーザーと同じ目線で伝えることができます。そのため企業発信の情報よりも信頼されやすいのが特徴です。自社からのネット広告発信だけでなく、タイアップ投稿などを活用したPRが今後さらに重要となるでしょう。
6.まとめ:トラッキングを正しく理解しよう!
ネット広告には欠かせない「トラッキング」。今後はプライバシー保護の観点から、ユーザーが自分自身でトラッキングの許可/拒否を選択する必要があります。
- トラッキングはネット広告のターゲティングに欠かせないもの
- トラッキングの許可/拒否は後からでも確認・変更できる
- ネット広告はトラッキング規制の影響を考えて戦略を立てよう
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